ミニマル・アートについて

ミニマル・アートの始まりを考える時、ブランクーシの彫刻や、マレーヴィッチの方形の絵画がふと思い浮かびます。
ですが、ブランクーシは半抽象から完全抽象への道を追求した彫刻家であり、マレーヴィッチは革命期のエネルギーに共振して絵画を制作しました。
ミニマル・アートは、20世紀後半の安定した社会の中で、物質文明がより成熟していく過程での、反情緒的、理知的美意識に立脚していますので、20世紀前半の作家の作品とは自ずと異なります。

では、ミニマル・アートが直接的にどこから始まったかと言うと、それは、バーネット・ニューマンの1950年の彫刻 “Here I” と彼の絵画からだと思います。
そしてここからドナルド・ジャッド、カール・アンドレ、ウォルター・デ・マリアに一気にジャンプしている感があります。いわば、個から全一性(ホーリズム)へのジャンプですが、その間に大きな空間が残されました。トニー・スミスやリチャード・セラ、ウーリッヒ・リュックリームが、この領域で活動しており、ソル・ルウィット、ダン・フレヴィンはこの領域でも活動しています。ロバート・スミッソン、リチャード・ロングも関係の深い作家です。

ミニマル絵画とは何でしょうか?
画家の手業を残さず、幾何学的抽象とも違うミニマル絵画とは?

この領域にはまだまだ未踏の地が多く、これから大きな可能性を持った場所です。

また、ミニマル・アートを、最小限の表現という定義から離れて、その単純化、簡素化の傾向に注目すると、実に多くのアーティストがこの傾向を持っています。

そう考えると、ミニマルな傾向は20世紀後半のアートの隠された潮流であり、ミニマル・アートの出現はその当然の帰結である、と言えます。
これは現代生活の一般的な流れとも合致しています。

私はミニマル・アートの多様性に大いに興味を持っています。

Eizo Nishio, January 2017

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